吸葛2010/05/23 10:59:56

雨上がりの朝は、好きだ。 況して、其れが金曜日なら尚更だ。 駅への裏道に「吸葛」が咲いて居る場所が3ヶ所有る。 小生が子供の頃には、何処にでも有った花だが、今では探して仕舞う位だ。 このフォトは、隣り合う花の雄蕊が手を繋いで居る様に見えたのが面白くて、S001を向けた。

吸葛

花の形も面白いし、名前の通り、蜜が吸い易くて甘い(「スイバナカズラ」の別名も有る)ので、子供の頃はチューチュー遣り過ぎて、御腹を壊した。 殺虫剤でも吸い込んだのかも知れないなぁ… 欧米でも、事情は同じだった様で、スイカズラ類の英名は、honeysuckle (蜜吸)。 日本には水を吸う葛の意味から、この名前が付いたと云う説も有るが、だとしたら、水葛と書きそうなもんだ。
尚、日本種の学名は、「Lonicera japonica Thunb」。 ロニセラ(Lonicera)は、16世紀のドイツの数学者/植物採集家だった、Lonitzer 氏の名前をラテン語化した「Lonicerus」に由来するそうだ。 欧米では、葛と共に樹木に絡み付き樹勢を衰えさせる厄介な「帰化植物」として、嫌われて居ると云う話だ。 日本では、そんな悪評は無いのにね…
半常緑で冬にも葉を維持するので、忍冬(にんどう)と云う別名が有るが、小生はこの木本(草本では無い)から「冬場を耐え忍ぶ」と云うイメージは湧いて来ない。 気が付いたら、咲いて居ると云う感じなのだ。 盛りを過ぎた花が黄色く成るのを観るのは嫌いなのだが、特にこの花は其れが顕著なので、此れだけは頂けない。 一方、この特徴を捉えて、「金銀花」と云う豪華な名前も頂いて居る。 蕾や秋冬の茎葉には抗菌作用や解熱作用が有り、生薬として利用されたらしいが、蕾の生薬は「金銀花」、茎葉の方は前述した「忍冬」と呼称されて居る。
若芽や若葉を和物や煮物等にして喰す、と云う話は子供の頃に聞いたが、この風雅な香りをリキュールにすると云う情報も見付けた。 ホワイトリカーで熟成させると薬効も高く香りが素晴らしい、とか。 以前とは違って、今の吸葛は人様の垣根に咲いて居るので、近所での調達は難しい。 此とは別に家康公が愛飲した「忍冬酒」と云うのも有る。 広辞苑に依ると「薬用酒としてスイカズラの茎葉の浸出液と焼酎との混成酒」との事。 このトピックは、此処此処に詳しく紹介されて居るが、一度、取り寄せて見たい。
俳句では、夏の季語に為って居るが、「忍冬」と記すので冬と勘違いして居る記述も見掛けた。 蕪村の佳句を一首。

蚊の声す忍冬の花の散るたびに   与謝蕪村

花言葉のひとつは「愛の絆」で、何と無く、このフォトの二輪に相応しい。

余談と申し上げては何だが、遠藤周作氏の随筆集に、中学生の氏が懸想文に「君を何かに譬えれば それは野に咲くすいかづら」と書いて送ったと云う話が載って居る。 氏程に為ると斯くな中学生かと感心するが、落ちが面白い。 受け取った女性は、「西瓜面」と誤解して激怒したとか…

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