撮って見た 其の522012/10/21 22:10:55

草苺(クサイチゴ)

細流(せせらぎ)に枝先を染める様に咲くのは、草苺の花。
20121021 撮って見た 其の52-1
草の名を冠するが木本で、バラ科キイチゴ属。 珍しい花では無く、良く見掛ける。 祖母は「鍋苺」と教えて呉れたが、ジャムにする鍋では無くて、集合果が中空(果床が目立たない)なので此の別名が有る。 結実時期が早いので、「早稲苺」とも呼ばれる。 花言葉には、尊重と愛情・誘惑・甘い香り等が有る。

20121021 撮って見た 其の52-2
花よりも喰用と為る果実の方が知られて居るかも知れない。 甘酸っぱくて美味しいと云う意見も有るが、ジャムにした方が良いと小生は思う。 或いはホワイトリカーで、ラズベリー酒にして仕舞う…とか。 葉や茎に小さな棘が有るので、焦って実を取ろうとすると反撃を喰らう。
今は果物屋さんに並ぶ苺だが、明治に至る頃迄は「イチゴ」と云えば「キイチゴ」を指した。 草苺を含めて樹に生るイチゴは、一括りで扱われて居た様だ。 毎度、引用する平安期の「本草和名」や「倭名類聚抄」には、早くも「以知古」の表記が有る。
余談だが、大河ドラマで知られる様に為った?西行法師の「山家集」に以下の句が残る。

  いちごもる うばめ媼(おうな)の かさねもつ このて柏に おもてならべむ

「イチゴ盛る」と解釈された方の文献から引用したのだが、其れでは意味が通らない。 渡部保氏の解釈、
「市児(町家の子)の子守りをする年老いた子守り女が重ねて持っている『このてがしは』(柏の一種とも女郎花とも)、それは表裏の別がなく、『このでかしはの二面(ふたおもて)』と言われている通り、私も同じく顔を並べよう(他の人と同じく老下女に思いをかけよう)。 (『このてがしは』は『児の手柏』と掛けている)」
が妥当だろう。 残念乍、イチゴの詩では無さそうだ。
余談序でに、現代苺が園芸学上の定義では野菜と云うのは知られた話だが、可喰部は花托の発達した部位で、表面の粒々が果実(痩果)なのだ。



二輪草(ニリンソウ)

川中美幸さんの歌は好きと云う訳では無いが、清楚な此の花には惹かれる物が有る。 板橋区の花にも為って居るのは、キンポウゲ科アネモネ属(イチリンソウ属)。 そう、アネモネの仲間なので有る。 アネモネは、希臘(ギリシャ)語で「風」を意味するが、揺蕩う二輪草は当に風の花。
20121021 撮って見た 其の52-3

   寄り添いて 微笑み交わす 二輪草 風に揺られる 楽しみ知りて    龍

一輪草、三輪草(桜草の仲間の九輪草も)も有るが、茎から延びる花茎の本数で識別する事は出来ない。 二輪草も一輪や三輪で咲く事も珍しく無い。 花弁に見える萼片の数も5~7枚と一定して居ない。 「鵞掌草(ガショウソウ)」の別名が有るが、中国名の「鵝掌草」由来。 「鵝」は「鵞」の異字体で有り、「掌」は手や足を意味する。 葉の形を鵞鳥(ガチョウ)の足の形に擬えて、此の名前を持つ。 花言葉は、思慕・記念。

20121021 撮って見た 其の52-4
キンポウゲ科の植物は、大抵有毒だ。 二輪草も例外では無いのだが、有毒成分が少なく、熱を加えると毒性は無く為るので、御浸や和物、油炒等で喰べると美味しいそうだ。 此の植物の葉が猛毒の山鳥兜(ヤマトリカブト)に似て居ると云うのは、知られた事なのだが、毎年の様に死亡事故がニュースに為る。 二輪草を山菜として良く喰べる東北、北海道での事故が多く、2012年も函館市で二人が亡く為って居る。 悪い事に両者は同じ処に生える事が少なく無い。 葉は似て居るが、花は色も形も全く違うので花が咲いて居れば、識別は容易だ。 余談だが、山鳥兜は花粉も有毒なので、蜂蜜による中毒例も報告されて居り、油断が為らない。

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