饗くろき@秋葉原2012/06/20 20:42:21

5日前の予報よりも24時間早く颱風が過ぎ、朝には雨は上がった。 祐貴君と武田君が秋葉原の名店、「饗くろき」の1周年を御手伝いすると云う特別な日。 彼らの念が天に通じたのだろう。
前夜は東海道線が止まる前にオフィスを抜け出したが、一寸寄道をしたので、帰宅と同時に暴風雨に為り、地元のアメダスで最大瞬間風速35.7mを記録した。 未だ風の強い此朝は、ゆっくり家を出るのが普通だが、「線路に強風で飛ばされた建築資材が散乱して、前夜から引き続いて電車は運転見合わせ」とのニュースが早朝に入り、考えを改めた。 此れは遅い時刻は逆に混みそうだ、と。 こんな時は皆が遅く家を出ようとする筈だし、ダイヤが混み合う時刻に為れば、東海道線は渋滞するのだ。 其処で、運転再開の報を聞くと同時に3番電車に向けて出発。 いや、休んで仕舞っても、誰に咎められる様な日では無かったのだが、この日はオフィスは兎も角、どうしても秋葉原に行かなくては為らない、MUSTだったので有る。

饗くろき@秋葉原-1
颱風の置き土産。 富士山に掛かる巨大なレンズ雲(夜のNHKニュースでも放映された)を E-PL1 に収めて居ると、「2番電車が30分遅れて来る」と云う構内アナウンスが聞こえて来た。 では、とホームに降りると、2番電車と3番電車(に乗る心算だった)の両方の乗客を乗せ、2番電車がタイミング良く到着。 思った通り、未だ空いて居り、2電車分の乗客を乗せて居ても未だ空席を見付ける事が出来た。 そして、スピードを落とす事も無く、順調に東京駅に着いた。 普段の日よりも此の時刻の乗客が圧倒的に少ないのは、小生の予想通り、皆さんの出足が鈍かったのだ。 …で、此後は7割運転の間引で、阿鼻叫喚の世界が待って居た様だ。 オフィスでツイッターを眺め乍、作戦自賛のスープは美味しい。 あ、長々と自慢話を… そう云えば、前夜に帰って来なかった奥さんはどうしたんだっけ(笑)?

次に考えたのが、饗くろきに伺うタイミング。 夜は先約が有るので、昼営業にしか伺え無い。 限定作品の「軍鶏そば」は、11時30分~14時20分に並んだ人に提饗されると云う。 此の店は人気店なので、然ぞや行列が長いだろうと、正直、少し気が萎えたのだが、あれだけ祐貴君と武田君が力を入れて準備したのだ、パスは有り得ない。 ツイッターをウォッチして居ると、開店35分前に30人の行列との事。 あはぁ、此はオフィスを一寸抜け出して、なんて事では時間が足りないだろう。 では、此の日限りの事と踏ん切りを付けて、午後は休暇とした。 饗くろきには、初めて伺う。 若い頃に通った、IBMのトレーニングセンター(今は無い)の直ぐ近くで、30年前を懐かしく思い出して、12時30分に到着。
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うむ、矢張、30人程の行列が… フォトの赤い範囲に人が並んで居る。 植物が有って判り難いが、駐車場の出入口を空けたり、他店の扉を塞がない様にと女性スタッフが気を配って居る。 小生は右端の御兄さんの後ろに付く事に為る… 行列を整理されて居る接客の優しいスタッフの方に伺うと、「現在44番目の方が喰されて居る処」との事。
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小生の番号は75番。 算数すると1時間は待たないのかな?と云う感じだ。 整理券が其儘喰券に為って居るので、こんな計算も出来る。 一寸、便利だな。 喰べる前に昼休みの時間が過ぎて仕舞う方が、「夜に振り替えられないか」とスタッフに云う。 すると、忙しい黒木さん御本人が出て来て、丁重に御断りされて居る。 返金で話が纏まって、良かったのだが、御店主の御人柄が垣間見えた。 前述した様に行列の並ぶ場所等のコントロールが行き届いて居るし、店の回転も悪く無い。
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其故、此日の作品の拘りが書かれたペーパーを読んだりして居ると其れ程待たされた印象は湧かない。 が、着丼迄は、やっぱりの1時間。 製麺担当の武田君が席の捌きを担当されて居る。 偶々調理台の前と云う特等席。 厨房の印象はフレンドリーでカジュアルだ。 緊張感漲るという環境も悪くは無いが、小生の好みから云えば、此方だな。 勿論、祐貴君の麺上げも、黒木さんの調理も、スタッフの麺飾りにも隙が無く、真剣だ。

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如何にもアイデアを練ったと云う風情のデザインだが、スマートに配置されて居るので、雅な印象を与える。 スープを啜ると、流石に超が付く程に美味い。 直ぐに判る鶏油の旨味とジワジワと沸いて来る滋味が、見事に構成されて居る。 軍鶏なんだろうが、濃い鶏の味わいが複雑で凛とした醤油と見事にコラボする。 麺は濃い色で、武田君が製麺しただけの事は有る(笑)。 全粒粉を焙煎した物を使ったそうだが、喰感もパキッとして居て、腰も充分、風味にも云う事が無い。 武田君のセンスは蔦で確認済みだが、更にレベルが向上した様だ。 此の麺がきっちり仕上がって、スープと引き立て合って、一杯が完結する。 チャーシューは2種類。 1枚は濃厚な腿肉で、もう1枚はサッパリとした胸肉だ。 後者にはうっすらと柚子香を付けて居るのだろうか。 実に高級感の有る旨さの品性は高い。 メンマも気を使って収めて有る。 色は濃いが、魚介の味わいは其処迄は強めて居ないので、スープとの相性も良い。 細かい点では、針生姜が憎い。 薬味葱と相俟って、高尚なニュアンスを齎して居る。 此の一杯の、出汁、タレ、麺、具材… 全てが同じベクトルを有して居り、ひとつとして違う方向を向いて居る物が無い。 此は黒木さんのコーディネイションが巧みだったのだろうが、祐貴君も武田君も良く其れに応えた。 3人のチームワークの良さが丼の中に結実した。 黒木さんの御薫陶宜しきを得て、蔦が亦、一廻り大きく為る、そんなエポックメーキングなイベントだった。
店を出ると、矢張、行列は30人の長さを維持して居る。 14時20分迄に何喰出て仕舞うんだろう。 休みを取っても来るべき一杯だったともう一度、行列に目を遣って引き上げた。