今日のワイン 其の743 ― 2012/06/18 01:01:00
ドミニク・ローラン ブルゴーニュ・ルージュ キュヴェ・ヌメロ・アン
Dominique Laurent " Cuvee Numero 1 " 2009 Burgogne A.C
5月の連休以来、孫の顔を見に行けて無い小生だが、仕事と子育に奮闘して居る様子が伺える娘夫婦から、ワインが届いた。 父の日… 嬉しい物だな。 当然、当日に抜栓。 ドミニク・ローラン。 高島屋がボジョレー・ヌーヴォーで、彼とタイアップして居るので、以前は娘とも良く飲んだ。 父親の好きな造り手を覚えて居たのか、偶々なのか? 何れにせよ、有難くと云う訳だ。 慎重に温度管理をして、グラスやデキャンターを整えて…
「キュヴェ・ヌメロ・アン」は、ACブルゴーニュの中でも特に良い葡萄だけを集めたとされるが、ネックラベルに "DE LUXE" と書かれて居る。 此れは出来の良かったヴィンテージに貼られるそうだが、08年に続いて09年も「ドゥ・リュクス」と、ローラン氏が認定した。

抜栓直後は、流石に酸味が立って固い印象。 だが、フランネルを通す様な派手なデキャンタージュは避けて、慎重にカラフェに移す。 更に20分位そっとして置くと、良い感じに開く。 中々、手懐け易いのも氏の作品の特徴かも知れない。 ノンフィルターなのだろう。 細かい霧の様な粒子が底に沈み、液体全体もややスモーキーな様相が見て取れる。 だが、其の向こうに張りの有る瑞々しい印象を持つルビーレッドが、深い色相も湛えて存在し、ピノはこうで無くては…の気持にさせられる。 弁えたボリュームのブーケは、華やかに彩られて居る。 レッドチェリーにとラズベリーがコアで、プラムやブラックベリーなんかも少々。 最初は淡かったスパイスも時間が経つとそっと忍んで来る。 タッチは柔らかいと云うよりは、潤いを感じる。 落ち着いて来た酸味がベリーの濃いけれど、過ぎない甘さに絡んで行く。 其れがバルーンな印象で広がって行く様子は、流石にブルゴーニュ・ルージュとは、一線を画す。 スパイシーな印象とハーブのニュアンスも感じられる様に為ると、愈々、佳境に入る。 タンニンは充分に働き乍、細かく優しい。 此れがアフターに嫌な印象を残さない要素のひとつだ。
うむ、今回は絶対に甘口の表現が多いなぁ(笑)。
撮って見た 其の49 ― 2012/06/18 12:05:35
東国三葉躑躅(トウゴクミツバツツジ)
ツツジ目ツツジ科ツツジ属。 三葉躑躅の雄蕊は5本だが、此の花には10本有るので、丹沢等で見られる東国三葉躑躅だろう。 枝の先に葉が3輪生するのは同じだが、花と葉がほぼ同時(やや花が早い)に出る。 フォトの樹では、気の早い花を葉が開こうと追い掛けて居るタイミングの様に見える。 因みに三葉躑躅では、完全に花が先だ。
御約束の「躑躅」の字に就いて、触れて置こう。 初めてこの漢字を見た時は、どくろ(髑髏)と云う花が有るとは凄い、と思ったものだ。 「ツツジ」と書いた時には石楠花や五月も含まれるが、漢字で書いた時には含まれないそうだ。 漢字の「躑躅」の由来は、中国で毒性のある種類のツツジを羊が誤って喰べると、足を踏み鳴らして藻掻き、蹲まって仕舞うそうで、此れを躑躅(てきちょく)と云うとの事。 其故、中国ではツツジを「躑躅」と書いたと物の本にある。 矢張、此の凄い漢字には怖い話が有ったのだ。
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唐茱萸(トウグミ)/夏茱萸の変種
グミ科グミ属。 唐茱萸は夏茱萸の変種だが、本家の夏茱萸との区別は難しい。
萼の筒部が子房の上端で細く為り、括れが見られる。
若い葉の表面に星状毛(先端が分裂する短毛)が有る。 此れは頓て抜けて行くのだが… 此のふたつの特徴から、此れは唐茱萸とした。 特に「萼の筒部の括れ」は甚だ心許無い。 其処で改めて、5月末に葉表面のチェックに伺った。 気に為る事は、クリアして置きたい性質(たち)なので有る。
尚、葉に止まって居るのは並天道虫(ナミテントウムシ)の「変形二紋型」。 一般的には、二星天道虫(フタツボシテントウムシ)と呼ぶ。 (並天道虫の斑紋数の話は、とても面白いので、興味の有る方は調べて見る事を御奨めする。) アブラムシを喰べて呉れる益虫。 御日様に向かって飛ぶので、天道虫と呼ばれる。 転び易い訳では、無い。

星状毛は葉の成長に伴い抜けて仕舞うのだが、幸い未だ此れを残して居る葉が有った。 藪蚊に悩まされ乍、撮ったのがこのフォト。 マクロレンズでは、上部のフォト迄しか寄れなかったが、更にルーペ等を使うと、下部の様な様子が判る。 此処ではフォトのクオリティは、御容赦頂きたい。
5月には既に果実が実って居た。 果実は偽果(子房以外の部分が加わって出来る果実)で、夏茱萸よりも唐茱萸の方が少し長い/大きい。 茱萸の葉や花には細かい斑点が有り、薄汚れた印象が有る。 祖父母の家の庭には秋茱萸の樹が有り、渋いのを我慢して、矢張斑点だらけの実を喰べた事を思い出す。
「茱萸」の漢字だが、早春を彩る黄色の集合花「山茱萸(さんしゅゆ)」と同じだ。 そう云えば、ミズキ科では有るが、山茱萸の実はグミっぽい。 尚、「グミ」に「胡頽」の漢字を当てる事も有る。 グミは元々「グイミ」と云われて居たが、「グイ」は棘、「ミ」は「実」で、即ち「棘の有る実」と云う事だが、唐茱萸の実には棘は無い。 「グミ」の音に関しては、異説も多く、「口に含む実(くくむみ:実を口に含んで皮を出す)」が転訛したとか、渋み(赤ワインにも含まれるタンニン)を「刳(えぐ)み」として、其れが「グミ」に為ったとも云われて居る。 一方の「唐」だが、彼の国から渡来した訳では無く、日本原産。 牧野先生に依れば、「単なるイメージ」との事。