撮って見た 其の472012/05/27 00:33:45

深山嫁菜(ミヤマヨメナ)

撮って見た 其の47-1
嫁菜とか野紺菊等の所謂「野菊」は判断が難しい。 有り触れて居るだけに、きちんと同定しないで来て仕舞う。 此れは4月に咲いて居るので、深山嫁菜だろう。 キク科ミヤマヨメナ属と云う独立属を持ち、嫁菜の所属するシオン属とは別に分類される事が多い。 新芽は喰べられるそうだが、嫁菜程には美味く無いとか…
撮って見た 其の47-2
嫁菜の名前の由来に就いては、本家を取り上げる時の御楽しみにしておこう。

撮って見た 其の47-3
前年も取り上げた都忘は、深山嫁菜の栽培品種だが、改良され始めたのは江戸の頃。 だから、承久の乱の後に順徳天皇が佐渡で

いかにして契りおきけん白菊を都忘れと名づくるも憂し

と詠われたのは、白菊の深山嫁菜だったのかも知れない。

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灯台躑躅(ドウダンツツジ)

撮って見た 其の47-4
御馴染の可憐な花だが、ツツジ科ドウダンツツジ属。 秋には紅葉でも目を楽しませて呉れる。 本州、四国、九州の蛇紋岩地帯に自生地が見付かって居るが、20世紀の初めには、自生地は無いのではないかと云われて居たらしい。 先に燈台草の名前の謂われを紹介したが、この花も枝分かれの仕方が宮中行事で使われた「結び灯台」の脚の部分に似て居る処から付いた名前が、「ドウダン」に転訛したと云うのが定説だ。 「満天星躑躅」と表記する事も有るが、葉が出る前に沢山咲く白い花の様子を満天の星に准えた様だ。 「躑躅」の由来は、次回に「ツツジ」を取り上げる時に触れる事にしよう。
フォトは4月15日に撮ったのだが、灯台躑躅は「4月14日の花」。 花言葉の一つは「節制」。

撮って見た 其の482012/05/27 11:28:04

木通(アケビ)

アケビ科アケビ属。 熟した果実に大きな裂目が入るので、開実。 此れが転訛して、アケビと為った。 御多分に漏れず、子供の頃に林の中で裂けた果実を齧った経験が有る(種を沢山喰うと便秘に為る)。 そんな時は偉く甘く感じた物だが、長じて山行の際に舐めて見たら、素朴過ぎて記憶程には美味しく無かった。 だが、偶々其の日の旅館での夕餉に並んだ、肉を詰めて揚げた木通は美味かった。 いや、肉が良かったんだろう(笑)。 母方の祖父の実家は天童に有るのだが、広い農園の隅で此れを栽培して居た様だ。 数年前は近所のスーパーでも売って居た記憶が有るが、最近は見掛けない… いや、小生がスーパーに行かないだけかも。 
そんな想い出たっぷりの木通(此等の内の幾つかは、「三葉木通」(後述)だったかも知れない)だが、花も風変りだ。 同じ株に咲く花には、雌雄が有る。 フォトに見える薄紫色の花が雌花で、6本の太い雌蕊が覗ける。 木通の花には蜜腺が無い代わりに、雌蕊の柱頭に甘い液体が付いて居る。 雄花の方は花序に枝が多く、密集する(フォトでは黄緑色に見える)。 尚、雄花、雌花共に花弁に見えるのは萼。

20120527 撮って見た 其の48_1
此のフォトは珍しく好みに撮れた。 真中にぶら下がる汚い葉も情景の内としよう。 シャープネスを上げてシャッターを切ったので、やや目に優しく無いかも。

喰用は勿論だが、利尿や抗炎症の生薬(木通<もくつう>/木通子<もくつうし>)としても有用で、難しい名前の漢方薬として販売されて居る。 漢字の「木通」は此の利尿作用から、「小水が通じる木」と云う意味だと聞いたが、異説として「蔓を切って吹いたり吸ったりすると、空気が通るから」と云うのも有る。

最後に郁子に言及して置きたい。 女性のイクコさんでは無く、「ムベ」。 アケビ科でもムベ属と木通とは違う。 郁子の果実は裂けないのだが、木通を「裂ける郁子」と云う意味で、「開け郁子(アケムベ)」と呼び、此れが「アケビ」に為ったと云う説も有る。 余談を重ねるが、小生は「むべなるかな」と云う表現が好きだ。 詳細は何時か郁子を取り上げる時に譲りたいが、天智天皇の此の言葉が郁子の語源だ。 詰まり、木通と違って、裂けない果実の郁子は献上品で有り、木通より早い時期に名前を貰って居たので有る。

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三葉木通(ミツバアケビ)

20120527 撮って見た 其の48-2
木通の小葉は5枚だが、此方は名前の通り3枚。 フォトの赤黒い2輪が雌花で、其の下に垂れ下がった花序に密生して居るのが、雄花。 陽射の加減で赤い色が強く出て居る(敢えて補正は掛けて居ない)が、木通とは大分趣が違う。 果実も三葉木通の方が、大きくて紫色が美しいので、喰用には此方が御勧めだ。

俳句の世界では、「通草」の表記を良く使う。
此方は御存知、子規の句だが、如何にも彼らしくて良い。

老僧にあけびを貰ふ暇乞

此のトピックを取り上げようか迷ったのだが、我が敬愛する牧野富太郎先生が木通を随筆(「牧野富太郎選集 第三巻」)に認(したた)めていらっしゃる。 旅館で喰した木通皮の油炒に風流を感じたとの文章に我が意を得て、読み進む。 開裂した木通の果実を観察されて、次の様に書かれて居る。 「じいっとこれを見つめていると、にいっとせねばならぬ感じが起こってくる。その形がいかにもウーメンのあれに似ている。」 其れで、木通の別名に「山女」や「山姫」が有ると解説されて居る。 更に「アケビ」の名も此れに由来して居る、と説かれて居るのだ。 流石は我が心の師匠、御見事也(笑)。 最後に先生の句を紹介して置きたい。

女客あけびの前で横を向き

此れは川柳だと御友人に笑われたと有る。
「あまり長くなるのであけびの件これで打ち止め。」と先生の随筆の〆を流用させて頂こう。