撮って見た 其の702014/05/05 23:23:00

桜草(サクラソウ)
撮って見た 其の70-1
自生して居る桜草は見た事が無い。 鉢に鎮座して居るか、庭に植えられて居るかの何れかだ。 此の桜ライクな可憐な花を愛でる方は多い。 其れは江戸の昔も変わらなかった様で、多くの古典園芸品種が造られて居る。 自生種は薄い赤色で稀に白花が混じる。 其れ以外は、人工栽培で生まれた色との事。 昔からの自生地を抱える埼玉県の県花で有るが、大阪の府花でも有る事は今回初めて知った。 サクラソウ科サクラソウ属の花は国内で約300種(世界には400種)も有るが、通常は纏めて此の名前で呼ばれて居る。 好事家でも無い限りは、其れで充分なのだ。 英名が「プリムローズ:primrose」で有る事も比較的知れ渡って居るが、本来は「最初の子供」と云う意味の「primerole」から変訛した物で「rose (薔薇)」とは関係が無い。 希臘(ギリシャ)神話からの由来話をひとつだけ。 「プリムローズ」は、花の女神で有るフローラ(Flower の語源)のイケメン息子の名前、パラリソスから来て居る。 彼は妖精のメリセルタに失恋したショックで衰弱死して仕舞う。 小生は情けないと思うが、哀れんだフローラはパラリソスの姿を春一番に咲く此の花に変えたそうだ。

撮って見た 其の70-2
葡萄酒の色にさきけり桜草     永井荷風

桜に比べてイマイチ陰気なイメージ(英国では葬儀にも使う)を小生は桜草に持って居たが、此の句に出会って少し好きに為った。 ワインカラーの清楚な花…佳いねぇ。

桜草を「日本桜草」と呼ぶ方もいらっしゃるが、余り気に留めて居なかった。 が、先日「プリムラ(西洋桜草)」の名札を付けて売られて居るやや色の濃い花を付けた鉢を見掛けた。 ルックスは日本桜草と良く似て居たが、「Primula Malacoides」らしい。 こう為るともう突っ込みたくは無い…

「日本最古の園芸書『花壇網目』(1681年)には、『花薄色、白、黄あり」と二つの色変わりをあげるが、黄色とあるのはクリンソウと思われる。』」との記述を見付けた。 其処でハタと思った、色こそ黄色では無いが、此方の蕾は「九輪草」ではないかしらん。 此方は、「一輪、二輪…」では無く、重なって咲く姿が仏閣の屋根に有る「九輪」に似て居る処から此の名が付いた。


石斛(セッコク)
撮って見た 其の70-3
鎌倉の報国寺の屋根にチョコンと咲いて居たのを見てから、久し振りの再会。 着生植物としては最も有名なのではないだろうか。 単子葉植物ラン科に属し、芳香が有る。 フォトからも判る様に花柄の色が美しい。 漢方薬の石斛は、健胃、強壮に薬効著しいと聞く。 日本では記紀の医療神の少彦名命(すくなひこなのみこと)に因み、少名彦薬根(すくなひこのくすね)と古くは呼ばれており、良く知られた薬で有った。 「長生蘭」の別名も有るが、「デンドロビウム」の仲間で洋蘭の交配に使われる事も多い。 石斛は古典植物としても知られて居るが、花では無く観葉植物として親しまれて居た。 小さい株程良いとされ、「世界最小の観葉植物」との評も有る。 天保年間には多くの品種が造り出された様だが、残念乍、今では殆どが失われて居る。

撮って見た 其の712014/05/06 23:23:00

梅花空木(バイカウツギ)
撮って見た 其の71-2
我家の庭にも老父が丹精した此の樹が有る。 毎年、連休前後に香りの良い花を沢山付けるので、何と無く「有難花」と崇めて?居る。 恩師の園地の麓にも連翹と並んで毎年見事に花開く梅花空木が有る。 「好きな様に伸びて、勝手に咲け」を忠実に守って居る様な出で立ちは潔く好ましい。 園芸書に依ると「放任が一番花付きがよい、ただ樹形が乱れる」との事(笑)。 我家の樹も元は挿木だったのだが、此れで簡単に増える事を特記して置こう。 薩摩空木の別名が有る(学名も Philadelphus satsumi )のだが、何故か鹿児島県には自生して居ない。 バラ科かと思ったら、アジサイ科(バイカウツギ属)。 勿論、バラ目(APG植物分類体系ではミズキ目)で有る。 以前はユキノシタ科に分類された事も有ったのだが、最近の遺伝子研究ではユキノシタとは遠い事が判明して居る。 欧州原産のイメージが有るのは、「ジェラードの本草書」の所為だろう。 実際は土耳古(トルコ)辺りが原産らしい。 因みに英名は、「紛い物のオレンジ」と云う意味の「Mock orange」だが、そう云えば、花が似て居ない事も無い。 オレンジ同様に花香が良いので、蝶や花虻、蜜蜂が良く通って来る。

青条揚羽と
撮って見た 其の71-1

縞花虻。
撮って見た 其の71-3

そばはうす不如帰 其の292014/05/07 23:23:00

扨、どうしようと店の前で思案… 世の中の連休明けの水曜日、幡ヶ谷迄来たのだからと「開店30分遅れ」の看板を見詰めて、溜息だ。 でも、丼を前にすれば、矢っ張り待って居て良かったと思う。 此の一杯にはそんな価値が有る。

そばはうす不如帰 其の29-1

そばはうす不如帰 其の29-2
御願いしたのは、支那筍つけそば。 醤油ベースで小生が一番好きなメニューだ。 塩も絶品だが、小生は此のつけそばが大の好み。 甘いとも辛いとも云い難い不思議な旨さの虜に為って仕舞ったらしい。 石蓴の風味が良くマッチして居るし、合わせる麺のプリプリ感が最高だ。 細身の支那竹と一緒に直喰してから、漬汁に浸す時の緊張感が嬉しく思える。 太いメンマも海苔も全て好みで、云う事が無い。
週末にはスペシャルな醤油作品の提饗が有ると伺って居るのだが、ハードルが高くて小生には無理っぽいな…


御疲れな感じの紅小灰蝶。
そばはうす不如帰 其の29-3
同類相哀れむ気分でシャッターを切る。