撮って見た 其の742014/05/21 01:01:00

酢漿草(カタバミ)

幼少の砌、未だアイポイントが地面に近かった頃、此の黄色い花の判り易い形に親しんだ。 種鞘に触ると盛大に弾けるのが面白くて、繁茂に協力もした、かも。 何処にでも咲き、絶滅危惧種には程遠い存在なのが心強い。 タフな植物なので、他の花を撮る時につい踏み付けて仕舞っても、御免…で済まして仕舞う。 そんな人間の気楽さに迷惑して居るのかも知れないので、罪滅ぼしにもう一度、紹介して置きたい。

フォトは晴天の日に影の中に入れて、柔らかく撮った…心算。 陽が無いと閉じて仕舞うので、曇天での撮影は向かない花。
撮って見た 其の74-1
葉の一部が喰い千切られた様に見える処から「傍食」/「片喰」と表記される事が多い。 小生は此の漢字遣いが気に喰わないので、「酢漿草」を用いる様にして居る。 葉や茎に蓚酸(しゅうさん)を含み、齧って見ると酸味が有るので、此の字を当てて居るそうだ。 尚、片仮名表記の「サクショウソウ」は、消炎、解毒、下痢止の薬草(虫刺にも効く?)の名称。 別名やローカルネームの多い植物だが、夜に葉を畳み込む様子から「雀の袴」と云う粋な名前も持つ。 亦、酸物草(すいものぐさ)とも呼ばれて居るが、老人に依れば、金属の曇りを除去するのに此れで擦ったと云う。 子供の頃に10円銅貨をピカピカにした記憶も有る。 本名?の由来にも為って居る葉形は白詰草(クローバー)に似て居るし、四葉等の多葉変異体も見付けられる。 白詰草よりも四葉発生率が低いので、手にすると「もっと幸せ」に為れるかも。 実際、欧州では古代ギリシャ・ローマの頃から「魔除・厄除」の植物とされ、有事には剣の柄に結んで出兵した。

史前帰化植物で、「本草和名」「倭名類聚鈔」「和漢三歳図会」等に記載が見られる。 更に「枕草子」の「草は」には、以下の記述が有る。

酢漿 綾の紋にてあるも 異よりはをかし
(カタバミは綾織りの模様に織りだされていると、ほかの模様とは異なった趣がある。)

万葉集や古今和歌集の「花勝見(はなかつみ)」を酢漿草だとする説も有るが、アヤメ科の花とする研究が多い。

撮って見た 其の74-2
葉が赤紫色した都市部の環境に強い変種、「赤酢漿草(アカカタバミ)」も多く見られる。 此方は駆除方法が掲載される程、厄介者とされて仕舞った。 酢漿草は五大紋のひとつで家紋の種類が、桐に次いで多い事でも知られる(田中角栄さんの「剣片喰」等、一寸調べただけでも百は有りそう)が、此の「絶えない」繁殖力が武家に好まれた様だ。

撮って見た 其の74-3
亦、紫酢漿は娘の好きな花で、色が可愛い。 此れを「オキザリス」と呼ぶ人も居るが、カタバミ属の英名が「Oxalis」で、希臘(ギリシャ)語の「酸っぱい」に由来する。 花屋さんで「オキザリス」を探すと、球根性の園芸種に其の名札が付いて居た。

撮って見た 其の74-4
酢漿草と大和小灰蝶(ヤマトシジミチョウ)の関係は良く知られて居り、葉裏を返すと幼虫が喰草して居るのを見付けられる。 酢漿草と同じ位に都会でも見掛ける蝶で有る。 成虫は余り酢漿草には寄らない様に思えるので、此の様なフォトは余り撮れない。