撮って見た 其の542012/10/23 01:01:00

春紫苑(ハルジオン)

正しい漢字は「苑」では無く、草冠の下にもうひとつ「ウ冠」が入る。 詰まり、草冠に「宛」と書くのだが、表記出来ない漢字なので以下は全て「苑」の字を代用する。 夏の「姫女苑」(ヒメジョオン)と同じ発音、漢字と勘違いして、「春女苑」(ハルジョオン)とする間違いが多過ぎる。 手元の植物図鑑も此のミスを犯して居る。 こう遣って、間違いが伝播(でんぱ)して行くのだ… 逆に「姫紫苑」(ヒメジオン)と云う間違いも亦、少なく無い。 余談だが、「ハルシオン」は有名な睡眠薬…
両花ともキク科ムカシヨモギ属で、とても良く似て居る結果、こんな事に為る。 見分け方はネットで幾らでも調べられるのだが、「背が高い」とか「花が小さい、多い」等、其の場で両方を比べないと判らない表現が多い。 小生は、蕾が下を向いて居れば、春紫苑だと判別して居るが、真夏に為ると姫女苑も項垂れて来るので、戸惑う。 春紫苑の葉が茎を抱くと云うのも有効な判別法だ。 其れでも判らないなら、可哀想だが1本手折って見ると確実に判る。 茎の真中に空洞が有れば、春紫苑。 だが、「此の草を折ったり、摘んだりすると貧乏に為る」と言われて居り、「貧乏草」の異名が有るので、其の覚悟が必要だ。

撮って見た 其の54-1
フォトは態と区別が付かない様に撮った。 右手に傾いて居る茎が蕾に繋がって居ると推定出来れば、答えは出る。 更に咲掛の花の色が赤紫な事もヒントに為るかも知れない。 「舌状花の数が多い」と云うのは、両者を知って居る人で無いと判らないだろう。 今回は「春紫苑」の方を取り上げる。 名前の由来は「春に咲くキク科の紫苑」。 我が敬愛する牧野富太郎先生の命名なので、つい名前には拘って仕舞う。 明治・大正時代に北米から帰化したのだが、繁殖力が強く、「侵略的外来種ワースト100」に数えられて居る。 花の所為では無いのに、「ワースト」とは気の毒だ。
Erigeron philadelphicus と云う学名の Erigeron はムカシヨモギ属を指すが、希臘(ギリシャ)語の「eri(早い→早咲)」と「geron(老人)」の造語だ。 白い糸の様な花弁の舌状花が白髪にでも見えるのだろうか。
喰用は他の野草と同じ様に御浸、和物、油炒、天麩羅が挙げられて居る。 「糖尿病の予防」の薬効が説かれて居るが、余り信用出来ない。

尚、「姫女苑」に就いては以前に駒込佛行寺で書いて居る。



藪人参(ヤブニンジン)

線香花火の様に咲く(複散形花序:ふくさんけいかじょ)のは、藪人参。 セリ科ヤブニンジン属の代表。 藪虱(ヤブジラミ)や仙洞草(セントウソウ)の花と混同して居るのかも知れないが、比較的良く目にする花だ。 葉が人参に似て居ると云うシンプルな命名なのかも知れないが、根に薬効が有ったりするので、其方にも由来が有るかも。 尚、中国名は「香根芹(香りの良い根を持つ芹)」と根に注目して居る。 学名は Osmorhiza aristata だが、osme は香気で、rhiza は根だから、「香り豊かな根茎」と云う事で漢名と同じだ。 1センチ以上の太さに育つ根茎を干した物は「和藁本(ワコウホン)」と呼ばれる生薬で、鎮痛、鎮痙に効果が有るそうだ。

撮って見た 其の54-2
前述した様に花が特徴的だ。 外側に咲き、花の下に長い子房が有るのが両性花で、内側に固まるのが雄花。 両性花の子房が、棍棒状の細長い果実と為る様子が此のフォトでも判る。 藪虱程では無いが、種子が黒く為った後、先端の棘状の突起に依って服に付着する。 学名の種小名、aristata はラテン語で「芒(のぎ)形の、芒の有る」と云う意味。 勿論、期待は種子の動物散布だ。 其処で、長虱(ナガジラミ)の別名も与えられて居る。 地味な花だが、花言葉は「喜び」だとか。
毛の目立つ植物だが、「深山藪人参」と云う毛の無い種類も山奥には咲いて居ると伺った。