撮って見た 其の24 (堅香子)2011/03/31 23:23:00

丁度ピークと踏んで、堅香子の花を鑑賞に遣って来た。 もう、35年も前に為るだろうか… 結婚式の2週間位前、屹度、ゴールデンウィークの1日。 山梨県の四尾連湖から蛾ヶ岳に二人で登った。 今では考えられない?所業で有るが、途中でこの花に出会った。 当時からハイキング等はしない小生だったから、其の時初めて見たのだが、可憐な姿が瞼に焼き付いた。 蓮華草の喩えでは無いが、この花も自然の姿が好きだ。 世に「カタクリの里」の類は多いが、足を運ぶ気には為らない。 と為れば、足腰(特に腰)に自信の無い小生が、「自然な姿」のこの花に出会う事は難しく為って居た。 だが、「偶然を手繰り寄せて」とでも云おうか、小生の希望は叶えられた。

撮って見た 其の24 (堅香子)-1
ユリ科(カタクリ属)のこの花は所謂、スプリング・エフェメラル(春先にしか顕在化しない花)の代表で、短い花期を過ぎると、1ヶ月程で葉の姿も見えなく為って仕舞う。 小生が住む湘南の地は、この花に取っては暖かい気候だが、陽の当たる落葉広葉樹林の足元で、笹等の阻害を受けなければ、このフォトの様に為る。 所謂、「里山」の環境が有れば、可也南の地域でも其の姿を見る事が出来る。 尤も、里山自体が珍しく為って居るこの地で、里山や花々を維持管理する手間は大変だと拝察する。

撮って見た 其の24 (堅香子)-2
スワンのイメージが重なり、溜息が出る程に可憐だ。 花言葉(のひとつ)は初恋。 この明(さや)けしい光が欲しくて、早起きした。 (紀子さんの歌を後述)
陽光が有る時だけに花が開くと云われて居るが、気温が高いと曇天でも開くと伺った。
以前に仏の座や酢漿草(カタバミ)のアーティクルでも言及したが、この花の種子にはエライオソームが付いて居る。 蟻が好んで運ぶが、直ぐにこの物質は落ちるので、蟻は種を巣迄運ばずに途中で捨てて仕舞う。 其れに依って、種子が広がると云う仕組みだ。
発芽した後、花を咲かせるのに充分な栄養を鱗茎に貯めるのに、7,8年も掛る。 嘗ては其の鱗茎から澱粉を取ると云う可哀想な事をして居た。 片栗粉の名前は、この植物に由来する。

撮って見た 其の24 (堅香子)-3
老父の研究に敬意を払って、万葉を探すと直ぐに大伴家持の歌が見付かった。 が、この一首だけらしい。

もののふの 八十娘子(やそをとめ)らが 汲みまがふ
寺井(てらゐ)の上の 堅香子(かたかご)の花 

歌の話をもうひとつ。 2010年に秋篠宮妃が歌会始で詠まれた歌は、この手の中では、気に入ったので、良く覚えて居る。

早春の光さやけく木々の間に咲きそめにけるかたかごの花

俳句では、此れが良い。

かたかごの 花のふるへの 愁ひかな     上村占魚

五-七-五で無いのに俳句?と素人の小生は思うが、加藤楸邨のこの句も好きだ。

時流れきて かたくりの 一つ花

撮って見た 其の24 (堅香子)-4
真上から失礼します。 後ろ姿をスクエアに撮って驚いた。 弩真中に花芯が来るのね…

家持の「堅香子」が、「片栗」で有るかの議論は伺って居て面白い。 事の真偽は兎も角、何事も調べ、推論して行く過程は興味深い。
尚、古くは「かたかご」に「傾籠」の文字を当てて居るが、籠を傾けたようにして咲くと云う解説は判り易い。 「かたかご」は「片葉鹿子(かたはかのこ)」の意味と云う話を追って見ると、発芽1年目は片葉(一枚葉)で有る事と、長じてからの葉に鹿子模様の斑点が有る事に由来するそうだ。 この「かたかご」が変訛して「カタクリ」に為ったのだが、「片栗」の漢字は、喰用にする根の鱗茎が半分に割れた栗に似て居るので、当てられたと聞いた。

撮って見た 其の24 (堅香子)-5
輝く妖精。

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